「最後まで気を抜かず作曲してます」
今西佑介
今回のインタビュー企画、最後を飾ってもらうのはリーダーの今西さんにお願いした。新作の話だけでなく、バンドのことや作曲のこと、また、最後のインタビューということで他のメンバーに対するインタビューを踏まえていろいろな話をしてもらった。
●バンドについて
ーーバンド結成について教えてください。やはりセクステットにこだわりがあって結成されたのでしょうか?
特にセクステットにこだわって結成したわけじゃないんです。アメリカ留学を終えて帰国してからは、普通にセッションに参加したり、呼ばれたら演奏するというスタンスで過ごしていたんですが、仕事の以来がそこまで多くなかったんです。それで、じゃあ自分のバンドを組もうと思って、やりたい人みんなに声をかけていったら、セクステットになっちゃったというだけなんです。でもそうですねー、メッセンジャーズとかワン・フォー・オールが大好きだったから、セクステットという編成に憧れはもちろんありましたけどね。
ーーそうなんですね。留学後は並々ならぬこだわりがあって帰国されたと思っていました。
そもそも、そんなに留学するときもプロのミュージシャンになりたいとは思っていなかったんですよ。トロンボーンの先生になりたかったんです。だから今はその夢が叶っているといえばそうなんです。
ーー以前、ライヴのMCで横尾さんの演奏を初めて聴いたときの印象を話されていました。出会われたときに、関西にもこんなにバリバリとハード・バップを吹くトランペットがいるんだ、と思われたとか。他のメンバーと初めて会われたときの印象はどうでしたか。
横尾昌二郎
弦牧さんはリズムが単純に素晴らしかったんですよね。アメリカに留学していたときに聴いていたドラマーと同じように聴こえるというか、リズムが訛っていなくて。光岡さんもレイ・ブラウンみたいなベースを弾いていて、いいなあ、と。今はもうちょっとクリスチャン・マクブライドのようにコンテンポラリーなフレーズも弾く、ハイブリッドなベーシストという印象ですが。
ーー最近、新しく二人(柳原、永田)のピアニストがバンドに参加されましたが、その経緯はどういったことで?
柳原さんは三管に対しても、ソロに対してもコンピングがとても上手いなと思うし、どんな曲か瞬時にキャッチして自分を合わせる事が出来るのがすごいですね。音楽の経験値が高いです。
有吾はピアノの技術はもちろん、アイディアが豊かですよね。聴こえはすごく自由に弾いてる感じするんですけどかなり理論的にしっかり弾いてる。なのに、自由に弾いているように聴こえるるからすごいんですよね。つまり、めっちゃ歌ってるって事じゃないですか。柳原さんの方が感覚的に弾いてるんじゃないかなー。分かんないですけど。
永田有吾
加納くんの渡米をきっかけにバンドに一番しっくりくるピアニストを探していたんですが、柳原さんで落ち着きました。でもある時、バンドに演奏依頼が入ったんですが、柳原さんだけスケジュールが合わなかったんです。それで代わりにちょうど脱サラしてミュージシャンになっていた永田くんにお願いしたんです。その時のバンドの演奏がなんかすごく新鮮な感じがして、こんな感じも良いなと思って、それからピアニストが2人のバンドになってしまいました。
もともと柳原さんが東京との行ったり来たりの生活プラス忙しくて、スケジュールが合いにくいので、誰かもう一人代わりになる人がいればなーとうっすら思ってはいたので、ちょうど良かったですね。だからと言って、柳原さんクビとかそういう事は全然考えてなくて、こんなこと言ったらなんか調子の良いスケコマシみたいなんですが、もっと二人とそれぞれ良いバンドしたいなーと思ってます。
当たり前かも知れないですが、ピアニストが変わるとなんか違うんですよ。バンドの雰囲気も演奏も。でもずっとそうあって欲しいなと思います。
柳原由佳
●作曲について
ーー今西セクステットといえば、オリジナル曲が魅力的なバンドですが。作曲について何か変化などありますか?
まず昔からずっと一貫してるのは、ジャズ・スタンダードとかポップスでよくあるような恋愛の曲は書かないことと、出来るだけ読了感がプラスな音楽というか、聴き終わった後頑張ろうとか、前向きな気持ちになれる曲を書きたいとは思ってますねー。
ここ最近、実は作曲に少し苦労してまして、今回の新譜には新しく書き下ろした曲ばかりではなくて、前に書いてたけど今まで未収録だった曲(「My Man Steve」と「Night Shed」)も収録しています。
當村邦明
今までのCDで未発表のものも含めると自分にしてはさすがに何曲も書いてるので、過去に自分の書いた曲にフレーズやコードがどこか似てきてしまう、というのももちろん一つの理由なんですが。なんというか、こんなの僕だけかもしれないんですけど、精神的に不安定なのって作曲に重要な要素だと思うんですよ。
今、わりと仕事もプライベートも充実しているんです。身体的な疲れはあるし、そりゃ日々、ふつうに喜怒哀楽はあるんですが、かなり精神的には安定していて。自分的には非常に作曲には苦労する状況で(笑)
健康的な精神状態の時に曲を書くとバカみたいに明るい曲になってしまうんですよねー。一枚目のCDの頃の自分は割とそんな感じなんですけど(笑)そこまで明るいと、楽しい!とか、幸せ!って感情以外うまく表現出来なくて深みが出ないというか。
今は出来れば、ちょっと寂しかったり、なんか暗いニュアンスの曲調の中で明るいフレーズを書くようにしてますね。その方がちゃんと前向きな感情が表現出来る気がして。寂しい感じの曲に明るいフレーズ入れたらなんか強がってる感じが出て切なさ倍増しますし、暗い曲に明るいフレーズ入れたら落ち込んでるけど頑張って元気出そうとしてる感じが出るし。そうした方がちゃんと前向きな感情が表現出来る気がします。わかんないすけど(笑)
光岡尚紀
ーー作曲で大事にしている部分などありますか?
作曲で気を付けてる事というと、口ずさめることですね。真偽は定かじゃないですけど、昔誰かから世に残る曲は全部口ずさめる曲やって言われた事があって、なんかなるほどなー、ってその時思って。
あとは、これももう8,9年くらい前かな?だいぶ前になるんですけど、ギターの藪下くんと音楽の話してた時に「スタンダードとかでよくテーマの最後の(コード進行が)サブロクニーゴーの部分とかツーファイブの部分が二分音符の白玉になってて大体ミーミードーーーってなって終わるやつ(例えばAll Of Meの29,30小節目とか)、ああいうのよくあるけど、なんすかね?なんかすごくワンパターンというか、これでええやろ感がないすか?」っていう風なことを言ってて、確かに!!ってすごく共感したんですよ。だから曲のテーマの最後まで気を抜かず作曲してますね。そうならないように。僕の曲じゃ「Day Trip」と「Journey」の最後がそれに近いんですが、曲に馴染むフレーズになるようにどちらもかなり悩みましたねー。
●新作の録音を終えての感想など
ーー今回の企画による他のメンバーのインタビューを読んで印象的な部分などありましたか?
全部楽しく読ませてもらってますけど(笑)特に印象的だったのは、光岡さんの<ベーシストとして>と、<バンドのメンバーとして>の話ですかね。案外(?)あんまりバンドメンバーと音楽の話って普段しないので。
ーーでは、最後に新作の録音を終えての感想を。
出来上がりを聴いてみると、久々にめっちゃジャズだなー、と。こんな風にオールドスクールな聴き応えのあるCDは一枚目以来だと思いました。で、その一枚目を久々に聴いてみたんですけど、やっぱりまぁもちろん今の方がバンドメンバーが一人一人皆上手くなってますし、エンジニアの長島さんも上手くなってるし、ハーモニーの付け方も違うし、ハモる能力も高くなってるし、あれからめっちゃ成長したな!!って思いました。8年前の録音にしては、そこまで悪い気はしないですけどね。
弦牧潔
<後日談>
今西さんのインタビューは2回に分けてお送りしたいと思います。次回は、新作の収録曲を紹介してもらっています。